呼吸(いき)するように愛してる
美羽と付き合い始めた後、恥ずかしそうに微笑んで美羽が俺に言うから……その日の夜の俺は、どうしても美羽に対して手加減ができなかった。

……やっぱり、可愛いと思えば思う程、苛めたくなるようだ。ある部分では……

美羽はいつでも俺にまとわりついてきて、「たくみくん、だあいすきっ!」と言ってくれた。

「僕も美羽の事、大好きだよ!」そう笑って返す。“妹”みたい可愛がっている美羽に、そう応えるのは当然だ……

その頃は、そう思っていた。



*****



美羽が小学生になってから、いつ頃からか「匠くん、だあいすき!」を言わなくなったな、以前程、まとわりついてこなくなったな、というのは気付いていた。

美羽の「だあいすき!」は、幼い子の身近な年上の異性に対する“憧れ”みたいなものだったようだ。

……正直、ちょっと寂しかったけど、お互い成長していけばこんなものだろうと思っていた。

そんな気持ちが大きく動いたのは……もしかしたら、本当の気持ちに『気付いた』のかもしれないが。今となっては、どちらなのかよくわからない。

どちらにしても、“結果”は変わらなかっただろうし。

俺が高校二年生、美羽が小学四年生の時。あれはまだ、美羽が十才の誕生日を迎える前だった。

それまでずっと髪の長かった美羽が、バッサリと髪の毛を切った。

長い髪をいつも二つに分けて結んでいた美羽。俺を見かけると嬉しそうに弾んでくる美羽は、まるでうさぎのようで可愛かった。

そんな美羽が、髪の毛を短く切って恥ずかしそうに俺の前に現れた。

なんだか、知らない女の子を見ているようだった。

「…美羽……?」

俺の驚きに、美羽も戸惑っているようだ。その様子がまた、これまでのうさぎのように弾む美羽と違っていて……

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