呼吸(いき)するように愛してる
ただただ可愛いと“妹”のように思っていた存在を、一人の“女の子”として意識した。

美羽だと確かめるように、短くなった髪の毛に何度も指を通した。

くすぐったがる美羽を見て、美羽に触れる指先にどんどん熱を持った。

最後には、いつも通り笑って「美羽、可愛い」と言ったつもりだが、うまくごまかせただろうか……?

母さんは「美羽ちゃん、ショートになって“美少年”になったわね!」なんて笑っていた。

確かに華奢な美羽は、髪の毛が長かった方が女の子っぽく見えていた。

冷静に考えればそう思えるのに……今までと表情や雰囲気の違う美羽は、俺にはなぜか“女の子”にしか感じられない。

それから、美羽を見かける度に自分でもよくわからない感情がわき上がるようになった。

美羽に近付きたい、美羽に俺だけを見てほしい、……美羽に触れたい……

七月、八月と暑くなって、美羽の露出が増えてくる。

キャミソールからは、柔らかそうな胸元や二の腕がはっきりと見えるし、ショートパンツからは、美羽のスラリとした足が伸びている。

美羽のそんな姿を見かけると、心も身体も熱くなってくる。日に日にそれが、自分でコントロールできなくなっていくようで、怖かった。

だから、できるだけ美羽を避けるようになった。

俺達が高校生になってからは、夕食も自分達で準備するようになっていたので、朝倉家に行く回数がさらに減っていたのがよかった。

夏も終わり、秋も過ぎようとしていた。当然、美羽の露出はなくなる。それ以上に「スカートが似合わなくなった」と言ってズボンばかりを履くようになっていた。

美羽を見かけても、大きく反応する事はなくなった。

……よかった!……本当に。……自分の事、疑っていたから……

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