呼吸(いき)するように愛してる
『匠くん、お願い!……ダメ?』

ウルウルした瞳で、上目遣いに俺を見つめながら美羽が言う。

『…仕方ないな……』

美羽の肩に手を置き顔を近付けると、美羽が静かに目を閉じた。俺も目を閉じて、唇を重ねた。

触れるだけのキスを何度が繰り返し、美羽の唇が開いたところで、舌を入れた。

舌を絡ませながら肩に置いていた手が、美羽の身体の感触を確かめるように動いていく。

腕、腰、胸……美羽の身体は思っていたよりずっと、『大人のオンナ』のものだった。

美羽の甘い吐息を聞き、柔らかい胸の膨らみに触れながら、なんだ、大丈夫だったんだ……と、驚きながらもホッとする。

美羽の顔が見たくなって、ゆっくりと唇を離して目を開いた。

『匠くん……』

ランドセルを背負った美羽の澄んだ瞳から、涙が溢れていた……

「美羽っ!!」

叫びながら、上半身を起こした。息をつめるようにして、辺りを見回す。

「はぁ~……」

大きく息を吐いた。よく知った自分の部屋だった。

部屋の照明の小さな灯りだけで暗い。きっとまだ、真夜中だろう。

「夢か……よかった……」

一気に全身の力が抜けた。……なんて夢をみたんだ!!……でも、本当に夢でよかった。

まだどこかはっきりしない頭で、ひとまず安心する。

……っっ!!……思わず“そこ”に手をやって確かめる。……自分の身体の変化に気付き、愕然とする。

俺は、どうしようもない自己嫌悪に襲われた──

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