呼吸(いき)するように愛してる
「みちるちゃん、放課後、美羽のお話を聞いてくれる?」

私が、無表情のみちるちゃんを見つめながら言ったら、ゆっくりと瞬きをして言った。

「わかった」



*****



そして一日の授業が終わり、私の家。

リビングのテーブルを囲んで座っているのは、私、みちるちゃん、なぜかヒロくんまで。

放課後、私はみちるちゃんに話すつもりだった。けど、私とみちるちゃんは登校班(帰る方向も)が違う。

おうちの人が仕事をしている児童クラブの友達以外は、帰る方向が同じ友達同士に先生に振り分けられ、それぞれに帰って行く。

まだ登下校に安心できない“一年生”の私達には、放課後、友達同士でゆっくりおしゃべりをする時間なんて、なかった……

そんな事に、今さら気付いて呆然とする私に、みちるちゃんがそっと囁いた。

「大丈夫。お母さんに、美羽ちゃん家に送ってもらうから。待ってて」

私にはみちるちゃんが、女神様に見えた。

帰るとすぐお母さんに「みちるちゃんがくるから!」とだけ言った。

お母さんも「そうなの。おやつ、何があったかしら…」なんて言ってた。しっかり者で礼儀正しいみちるちゃんは、うちの家族からも人気がある。

……と言うより、頼られている。「お惚け美羽を、どうぞよろしくお願いします!」というところだ。

みちるちゃんはお母さんに「美羽ちゃんがお休みの間の算数のプリントを、教えてあげる約束をした」と言って、私の家まで送ってもらった。

!!みちるちゃん、そっちもお願いします!

そしてそこにヒロくんまでやって来て「僕も教えてあげる!」と、強引にくっついてきたそうだ。

……確かにヒロくんは、みちるちゃんと同じくらい、お勉強が得意だ。

帰る時の、私とみちるちゃんの様子を見て「何かある!」と感じたらしい。

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