呼吸(いき)するように愛してる
「ごめんね、美羽ちゃん」

と、みちるちゃんは目を伏せた。

「美羽は、わかりやすいからな!」

「・・・」

やけに得意気なヒロくんに、悔しいけど、よく言われる事だから何も言えない……
匠くんの事は、ずっとみちるちゃんに話してて、一緒にいたヒロくんも聞いていた。

二人とも、匠くんに会った事もあるから、ヒロくんにもわかる話といえば、そうなんだけど。

テーブルの上に、筆箱、プリント、教科書なんかを広げる。

「とりあえず、算数のプリントをしてから」

と、言うみちるちゃんに

「お願いします!」

と、深々と頭を下げた。

みちるちゃんに、ヒロくんも加わって、算数のプリントの解き方をわかりやすく教えてもらった。二人とも、さすがっ!

プリントをしている途中にお母さんが、オレンジジュースとクッキーを持ってきてくれた。

「みちるちゃん、ヒロくん、ありがとう!……こっちにジュースとクッキーを置いておくから、適当に食べてね」

「「ありがとうございます!」」

みちるちゃんとヒロくんが、小さく頭を下げると、お母さんはニッコリ笑った。

「美羽、お母さん夕食の準備してるからね。しっかり教わるのよ!」

「は~い!」

よし!これでしばらくの間、お母さんは顔を出さないだろう……三人で、目を合わせて頷いた。

無事、プリント二枚を終えて、今日の一番の目的だった『バレンタインデーの匠くん家での出来事』について話した。

時々、詰まりながら話す私に「何それ?」「はっ!?」なんて疑問か相槌かわからない言葉をはさむヒロくん。

それを「黙って」の一言で制しながら、私が詰まると、先を促すように質問してくれるみちるちゃん。

なんとか、自分の気持ちも話す事ができた。とりあえずホッとして、短く息を吐いた。

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