呼吸(いき)するように愛してる
ヒロくんが口を開きかけたけど、今度は、一瞥で黙らせたみちるちゃん。……みちるちゃんには、逆らえません!

「…匠くんに、ちゃんと訊いた方がいいと思う。『特別な女の子』、本当に“彼女”ができたかどうかを」

あえて使っていなかった“彼女”という言葉をみちるちゃんに言われ、軽くショックを受ける。

「……訊いた方が、いいかな?……」

珍しくみちるちゃんが、大きく頷いた。そして、さらに驚きの言葉を続けた。

「それとね、美羽ちゃん……匠くんが言った『大きくなったら』は『大人になったら』て意味だと思う。日本ではね、女子は十六才、男子は十八才にならなきゃ、結婚できないんだよ」

「っっ!!」

「あっ!僕も聞いた事ある!」

ちょっとふて腐れていたヒロくんが、パッ!と顔を上げた。

私は、目を見開いてみちるちゃんを見た。みちるちゃんが、再び大きく頷いた。

「十六才や十八才といえば、高校生くらいでしょ。結婚して生活しようと思うと、お金がいるんだよ。だからだいたい、学生の時は、結婚しないよ。働きだしてから、結婚するんだよ」

みちるちゃんの静かな言葉が、ゆっくりと私の頭の中に入ってくる。

……大人になってから、結婚する……匠くんは、まだ結婚できない……小さな私でも、いつか匠くんと、結婚できるかも、しれない……?

固まってしまった私に、みちるちゃんがゆっくりと、諭すように語りかけてくれる。

「だから美羽ちゃん、慌てなくていいから。本当に匠くんに彼女ができたのか、聞いてみよう」

私は、みちるちゃんを見て大きく頷いた。

気が付けば隣に立っていたヒロくんに、頭を撫でられた。

「美羽、がんばれ!」

匠くんは、私が感じているよりも、近くにいるのかも……

私は少しだけ、希望を持てた気がした。

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