呼吸(いき)するように愛してる
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みちるちゃん達と話してから、一週間くらい経ったけど、私はまだ、匠くんに何も訊けていない。

毎日のように顔を合わせる訳でもないし、訪ねていって急に「彼女できた?」なんて訊くのは、不自然だと思う。

……というのは言い訳で、訊く勇気がないのだ。

みちるちゃんは何も言わないけど、絶対に心配してる。

「美羽、訊いた?」という台詞が、あの日からヒロくんの日課のようになってしまった。

最初の頃は「そんなすぐに訊けないよ」なんて言っていたけど、昨日からは、つい口ごもってしまう。

「美羽の意気地無し!」

「っ!」

やっぱり、何も言い返せない。

みちるちゃん達と話して、十日くらい過ぎて……

私は、ようやく決心した。……ともママに、訊いてみようと。

今日がお休みのともママは、今、みんなの夕食を作っている。

以前は、両方の家族が一緒に食べていたけど(聡くんは、お仕事でいない事が多い)、匠くん達が大きくなってきて、夕食の時間が合わなくなってきた。

うちのお母さんが作った夕食を食べる時も、おかずだけをいくつか持って帰って、匠くん達の家で食べる。

要お兄ちゃんか匠くんか、どちらか早く帰ってきた方が、二人分のおかずを持って帰る…という形に変わってきてしまった。

私は、ともママのお料理を手伝って、できあがったお料理を、いただいて帰るのだ。

……とは言っても、まだ何もしていないけど。私はただの、ともママの話し相手で終わる事も多い。

野菜を切るともママの姿を、ダイニングテーブルの前に座りながら見つめる。

「よし!!」心の中で気合いを入れながらも、できるだけ、さりげない感じを装ってともママに声をかける。

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