呼吸(いき)するように愛してる
「あのね、ともママ。バレンタインデーの夜に、匠くんの同級生の“美里さん”て来てたよね?」

「うん?美里さん?そうだったわね……そっか、美羽ちゃん、会ったのね」

ともママが、チラッと私を見て頷いた。

「もしかして、だけど……美里さんって、……“彼女”だったり、する……?」

何とか、最後まで言ったけど、どうしても『匠くんの彼女』とは言えなかった……

「美羽ちゃん!……気付いちゃった?そっか~…小さくっても、やっぱり“女の子”よね~!」

最初、目を丸くしたともママだったけど、最後には「ニンマリ」という感じで笑った。

!!!えっっ!!!……それって……

「あんまり本人に言うと、恥ずかしがって、何にも話してくれないの!でも、そうなのよ!」

それからともママは、堰を切ったように話し始めた。

「美羽ちゃんも、思ったでしょ?すごくきれいな子よね!でね、性格も明るくって、しっかりしてて、話しても感じのいい子で…ほんとに、うちの息子でいいのかしら?なんて思っちゃったわ!」

目をキラキラさせて、ニコニコしながら、ともママは話している。

途中からは、ともママの言葉がよくわからなくなった。

無理矢理口角を上げて笑って、ともママの言葉に頷いた。でも、全然頭の中に入ってこない。

ともママが、こんなに嬉しそうに話すなんて……どこかで期待していた。ともママは、私の“味方”だって……

「美羽ちゃんが、匠のお嫁さんになってくれたら、すごく嬉しい!」

ともママは、私によくそう言ってくれていたから、本当にそうなんだと信じていた……

小さな私では、やっぱりダメなんだ……

突然、迷子になってしまったような、何を目指して歩けばいいのか、急に見えなくなってしまったような、そんな気持ちになる。

< 58 / 279 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop