呼吸(いき)するように愛してる
それに気付いて、思わず俯く。俯いた事で、溜まっていた涙がブワッと溢れてしまった。

どっ、どうしよう~~!!

こんな風に泣くつもり、なかったのに~!!

焦れば焦るほど、涙が止まらない。軽いパニックになっていた。

「美羽」

匠くんに名前を呼ばれる。顔を上げられないと、さっきよりもっと優しい声音で、再び名前を呼ばれる。

「美羽……」

諦めて、涙で濡れた顔を上げた。

匠くんは、フッと笑うと右手を伸ばして、指の背で私の左頬の涙を拭ってくれた。

そして……

匠くんの顔が近付いてきた。私はエッ?と固まる。

私の右頬に、柔らかいものが触れる。

匠くんの唇が、ツツッー…と私の涙の跡をたどるように、下から上に動いた。…たぶん…見えてないけど……

私の頬に、押し付けている感じじゃなく、でも、匠くんの唇の柔らかさや温もりは、ちゃんと伝わってきた……

匠くんの唇からの温もりが広がるように、顔、首筋、上半身…と、どんどん熱を帯びてくる。

私、真っ赤になっているかも……!

軽くリップ音がして、ハッとして匠くんを見る。

私から離れた匠くんは、私が部屋に入ってきた時のように座っていたけど……

その顔は、辛そうな、泣きそうな表情をしているように見えて──

私の知らない空気を纏った匠くんが、そこにいた。

何の言葉も発せず、ただ匠くんと見つめあっていた時

「匠~!ちょっと来て~!」

階下から、ともママの声がした。匠くんはスッと立ち上がると、無言で部屋を出ていった。

バタン!と扉が閉まる音で力が抜け、ペタンとその場に座りこんだ。

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