【完】好きなんだからしょうがないだろ?
夕陽に照らされた轟先輩の鋭い瞳。
まるで、心の裏側まで見透かされてしまいそう。
「泣くほど好きだったんだろ?」
「……っ、」
「自分を誤魔化すな」
胸の内を言い当てる濁りのない声は、何度も脳内で反響した。
「その調子で忘れられるとは思えないが?」
「いっ、痛っ……、」
コツン、とあたしのおでこを指で弾くと、微かに笑った気配がした。
「アンタは泣いてるより、笑ってる方がいい」
左ポケットに手を突っ込んで、あたしの前へ一歩近寄る。