【完】好きなんだからしょうがないだろ?
・理性と本能は甘く、苦く
大嫌いな体育祭まで、残すとこあと一週間。
果てしなく突き抜ける青空の下を、今日も莉子は懸命に走っている。
「なんで麻白 三葉が陸上部の休憩スペースにいるわけ?」
「な、成田さん曰く、肩身が狭いらしいよ?」
「ハァ?邪魔なんだけど……っ!」
ヒソヒソヒソヒソ。
本当にすみません……。
噂をたてられるあたしとしては、あの空気が漂う教室内で莉子を待つのは肩身が狭い。
かといって、グラウンドを見渡せるベスポジ、中庭へ行くのも轟先輩がいるかもしれないって思ってしまって。
あの時のーー莉子に手を弾かれた轟先輩の背中は、どうしてか寂しげに見えてしまって。