【完】好きなんだからしょうがないだろ?



「忘れるって……簡単に口にしちゃダメだよ三葉。本当に忘れるって決めたんなら、とことん記憶から消去しなきゃ……」



それは弱々しい声音。

地面に伸びた影法師がどこか悲しく歪んでいる   。



「忘れるって、結構辛いんだよ……っ、」



無理に笑ってみせる莉子の、猫のような瞳には、寂しげな色が入り交じっているように見えた。

 
ぽつり、と。

まるで自分に言い聞かせるように呟くと、くるんと回って背中を見せる。



「……また明日。体育祭、頑張ろうね!」



いつもの調子で私に声を投げて、歩き出した莉子の後ろ姿に、あたしはなんて声をかければよかったんだろう……。



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