【完】好きなんだからしょうがないだろ?



言葉の意味に、規則的な動きを繰り返す鼓動はたちまち暴れだした。


まるで蛇に睨まれた蛙のようにあたしは石みたいに固まってしまう。



「女の家に招かれて、みすみす帰る男はまずいないだろう」



重く、低く、熱っぽい声。


放心するあたしに身体を寄せて息を漏らすから、ヒヤリとしてつい喉を鳴らした。



「生憎、俺は好きな女以外抱く趣味はないが」



無機質な瞳に影を落として目を細める。



「忘れたいと言った男を、アンタが忘れる理由くらいにはなるのか?」


「理由なんて……」



やっと発した声が空気みたいに情けない。


轟先輩の骨ばった指があたしの顔を強引に上に向かせる。



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