【完】好きなんだからしょうがないだろ?
周りの騒ぎ声がものすごくうるさい。
この場に突如現れた轟先輩がなぜ健全な体育祭のリレーなんかに出るのか。
まさか体育祭をぶち壊すつもりか、走るなんて冗談だ、口出しでもしたら二段蹴りに遇う、他の選手を脅して出場するらしい。
そんな、心ない言葉はスタート位置に立つ轟先輩には届きやしない。
遠目から見える轟先輩へ襷を手渡すのは恐らく本来のアンカーで、一言二言交わしどうしてか安堵の笑みを見せたようにあたしには映る。
まるで仲間を送り出すように轟先輩の肩に手を当てると、勝利を託したとばかりに身を引いて観衆の中へ姿を消した。
どよめきがさらに高波のように勢いを増す。
「ねぇ、知ってる?」