【完】好きなんだからしょうがないだろ?
ゴールテープを切るのは轟先輩以外に考えられなくて。
それほど誰もが釘付けになった独走を終える轟先輩を、熱気と感激の声と一緒に、歓迎するかのように太陽が照らした。
初めて轟先輩に出会った時と同じ、その背中には羽がはえているみたいで。
轟先輩が呟いた、“何を見てみたい”と言ったのか、あたしは今さら気づいてしまった。
忘れることは辛いって莉子は言ったけれど、莉子は忘れてなんかなかったよね。
たった一人、走り続けることできっと、大切な……憧れの人を忘れたくなかったんだと思う。
ずっと追いかけ続けてきた背中は、すぐ近くにあったと思うから。