【完】好きなんだからしょうがないだろ?
「無口で、目つきが鋭くて、走ること以外に興味なんてないって……そんな雰囲気全開でさ。誰も近寄ろうとしないってことも、噂で聞いたんだけど……、」
「うん……」
洗練されているとは思うけど。
あの目に睨まれたら、それはそれは恐怖のあまり化石になること間違いない。
……あたしも、最初は真っ向から構えて、恐怖を感じてしまったんだから、その気持ちがわからないでもない。
「すぐに走り方を教えてもらった記録会で……言ったんだ。わたしも、轟先輩みたいに綺麗に走ってみたいって……」
変わらぬ憧れが、ぽつりと……素直に莉子の口から零れるおちる。
あたしは、陸上のことはよくわからない。
でも、莉子の走りを見た時に、心から綺麗だなって思ったんだ。
それは、追いかけ続けた轟先輩の走りと、同じだったね。