【完】好きなんだからしょうがないだろ?
轟先輩は、諦めたみたいな顔なんてしてなかったよ。
空の下を駆ける轟先輩は、莉子みたいに芯の強い瞳をしていたから。
「だから……走っていたことも辛かったことも、全部……忘れてほしくなかった」
いつも懸命に走っていた莉子。
たった一人のために、走る。
「強豪校とは無縁のこの学校に轟先輩がいることを知った。わたしは勝手でもいい。どうしても、轟先輩に会いたかった……」
憧れの人がいるって言っていたよね。
どうしても、この高校に行きたいって決心したように話してくれた。
「わたしは、轟先輩に教えてもらった走り方で、ただ、走ることでしか轟先輩を待つ方法がわからなくて……」
泣き腫らした赤い瞳がまた静かに滲むんだ。