【完】好きなんだからしょうがないだろ?
「何、すんのよっ……!?」
怒りにも似た気持ちで咄嗟に顔を上げれば、陽を浴びて眩しく輝きを放つハニーブラウンの髪がふわりと揺れる。
ーーー甘い甘いバニラの香りが鼻孔をくすぐる。
そして、放心状態のあたしの耳元にそっと唇を寄せると、“あの頃”より少しだけ低くなった声でこう囁いた。
「オレのこと思い出させてやろうか?」
「……っ!」
吐息混じりの声は、あたしの鼓膜を震わせて、同時に胸の奥に積もった思いまでもを揺らす。
この日、二度と会わないことを願っていた、絶対に許せない四ノ宮 玲央(しのみや れお)があたしの前に現れた。