【完】好きなんだからしょうがないだろ?
四ノ宮 玲央のバニラの香りが鼻を撫でる。
あたしの中で、存在を消去した、アイツ……。
「アンタなんてっ、知らないったら……!」
この現実を受け止める前に、四ノ宮 玲央をすり抜けると、ぶちぎりの全力疾走で学校まで走った。
教室に飛び込んだ私は、スマホを手に取りすぐに莉子(りこ)にラインを送る。
さっきのあたしみたいに、放心状態のうさぎのスタンプを何度も送りつけた。
「どうしたの……っ、三葉(みつは)!?」
「り、莉子……!アイツが、アイツが!」
数分後、手入れの行き届いた黒いショートヘアを揺らしながら駆けつけてくれた莉子に、半ば叫びながら抱きついた。
「あ……あ、アイツ?とにかく、落ち着いてよ三葉、ねっ?」