【完】好きなんだからしょうがないだろ?
朝のホームルームが始まる前に、莉子は騒がしい教室からあたしを廊下の隅っこに連れ出してくれた。
「ごめんね、莉子、朝練だったのに……」
「ううん。終わった頃だったし大丈夫だよ?」
猫のような瞳を緩ませて笑った成田 莉子(なりた りこ)は、あたし麻白 三葉(ましろ みつは)、の事情を知る陸上部期待の新人だ。
「それで、どうしたのよ!?」
「アイツ、あたしの一番会いたくないアイツがいたの!なんで……っ、だって、ここには……」
「……ああ。その件……ね。あのさ、み……三葉。実は、いつ話そうか迷ってたんだけど」
……と、莉子はひどく苦い顔をしてみせるから、ものすごく嫌な予感しかしない……。