Bitter love
教室に入ると廊下以上に五月蝿かった。
去年同じクラスだった人たちに会いに行くわけでもなく、自分のクラス内で早くも友達を作っている人たちが多かった。
そんな人たちの間を通り抜け、自分の席へと荷物を置きに行く。
私の席は、2号車で割と真ん中の方。
楓の席は、3号車の後ろから2番目だった。
楓はいつも窓側の席で嫌だ、と言っているけれど、「こ」から名前が始まる私からしたら、最初の席で窓側になることはないからわりと羨ましかったりする。
そんな言葉をぐっと飲み込んで、先生が来るまで、あるいはチャイムが鳴るまで楓と話そうと、窓側の席へと歩いていった。
窓側の席は風がよく入ってくる。そんな春の暖かさと青い空に、思わずあくびが出た。
それでも、チラチラと目に入るのは、はやくも散っていく桜だった。
『にしても、やっぱり凄いね~』
何が?と、口にするのはやめた。
彼女がその言葉を発する前に、廊下が今まで以上に五月蝿くなったことに気づいたからだ。
女子の黄色い声が五月蝿く響く中、めんどくさそうにあくびをしながら教室に入ってきたのは長谷川 理緒(ハセガワ リオ)。
私の彼氏だった。