今日から魔王はじめます!
「よし、出るぞ……」



音を立てずに、鉄格子の扉を開ける。


やはり辺りは真っ暗で、何も見えない。


レンはどうやら夜目が利くみたいだけど、私はまだ暗闇に慣れない。


スマホを何度か使ったせいだろうか。目がチカチカする。



「前、見える?愛美」


「ご、ごめん…よく見えなくて」


「魔術はまだ使えないんだよな?…ったく、ほら」



苦笑混じりのレンが、私の手を取る。


うわっ。


男の子に、しかもすっごい美形と、手を繋いでるなんて。


体育のフォースダンス以外で、男の子と手を繋いだことなんかないのに。



子供の頃からずっと剣道をやってたから、男の子と遊びに行ったりとかもしたことない。


マメがたくさんある手を、恥ずかしいと思ったことなんかなかったのに。


ちょっとだけ気にしてしまう。



「…よし、地上に出る階段を見つけた」



レンが、ぴたりと足を止める。


やっと私も目が慣れてきたところだったので、私も足を止めて向こうの方を見た。


一際暗いシルエット。看守だ。
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