今日から魔王はじめます!
立ち上がり、がむしゃらに走り出した。


凄まじい熱波は未だ消えず、私を襲ってくる。


どうして?どうしてこんな目に合わなくちゃならないの!?


今際の際の夢くらい楽しいの見せろ!



川に沿って走り続け、私は一度足を止め、近くの岩に手を当てて肩で息をした。



「はぁ、はぁ、はぁ」



信じられない。なんなの、ここは。


手に取ったカバンも煤でところどころ汚れている。


あー、このカバン結構お気に入りだったんだけど。あああ、やっぱりストラップも汚れてる。


だぁぁぁ、もうっ、誰だぁ!こんな森に火を放った不埒者は!!



その時。



ヒュン、と風を切る音がした。


それに一瞬遅れて、どごぉん!!と轟音が轟き、岩が崩れ落ちる。


爆弾!?と思う間もなく、またどこかしこで凄い音がしてきた。


今度はなんなの!?



「…え?」



岩だった物に近寄って、そっと崩れ落ちた破片をどかしてみる。


そこにあったのは、1本の鉄製の矢だった。


私の、よく知っているかたちの何の変哲もない矢。



…嘘でしょ?


これで岩を割ったっていうの!?
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