今日から魔王はじめます!
……気が付けば。


日はすっかり沈み、空は暗くなり、星々が瞬き始めた。


車がないこの世界はまだ空気が綺麗で、都市の明かりも少ないからか、夜空が美しい。



アシュタルトでも、夜には綺麗な星が見えるんだな。


そう思うと、意味もなくホッとする。



『陛下。中立区域です』



不死鳥の声に、私はおそるおそるだが顔の位置を動かし、向こうの方を見てみる。


目に入ったのは、活気のある市場と、建物。


人の様子はまだ上空からじゃよく見えないが、その数で、賑わっている町だということはわかる。



『ここでは私は目立ちます。


手前の森に降りるので、用意をしていなさい、陛下、そして勇者』


「はーい」


「了解」



素直に返事をして、私はフーデッドケープを着直し、かつらと眼鏡を整えた。
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