今日から魔王はじめます!
唖然とした顔で、彼は私の顔を見た。


痛いのも、面倒なことも、私は嫌いだ。


でも、目の前で人が倒れているのに、何もしないなんてできない。


人が人を助けるのに、理由なんていらない!



バッグの奥の方に入っていたスプレーを見つける。


体育の後の臭い消し用だけど、コールドスプレーの代わりになるかもしれない。


私はタオルにスプレーをかけると、また彼の頭に当てる。



その時だ。



ごう!!と背後で凄まじい音がしたかと思えば、背中に激しい熱を感じた。


振り向くと、そこにはさっきの…紅い炎が。


草も焼き尽くして、ここまで…!?



やっぱり、ただの火ではないのだろうか?



「逃げ…ろ…」


「え、」


「お前は…他の、魔族とは…違うようだ…。俺は、もう助からないだろう…。


その、膨大な魔力の使い方を…学び、世界を変えるため…、


今は、この火から、逃げろ」


「な…何、言ってるの!?見捨てて逃げるなんてできない!!」



炎のせいで、熱風となった風が、落ちていた写真を巻き上げる。


その写真が火の粉に焼かれたところを見て、私の心臓が、どくん!!と大きな音を立てた。



…この世界が、なんなのかは知らない。


でも…でも!


私になにかの力があるなら、目の前にいるこの人を守りたい!



…ドンッッ!!!



轟音が、轟いた。
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