今日から魔王はじめます!
「そうだな、」



ふらふらと立ち上がり、男の人が痛みを堪えるように歩き出す。


やがて私達を取り囲んでいた黒い炎の前まで辿り着くと、彼は進むのを躊躇するかのように立ち止まった。



それを見て、私は祈った。


黒い炎、私たちの味方なら、どうか彼を通してあげて。



すると、



「えっ…」



有り得ないことが起きた。


黒い炎が、まるで魔法が解かれたようにあっさりと掻き消えたのだ。


それも草が焼かれ、高温の為か、あまりの地面が白く融解しているという凄まじい痕跡を残して。


どうして?そんなに熱い炎なら、そばにいて熱くないはずないのに。



やっぱり、普通の火じゃなかったんだ…!



「ッ!」



逃げようとしていた男の人が、蹲る。


あわてて駆け寄ると、彼の額には脂汗が浮いていた。
< 23 / 383 >

この作品をシェア

pagetop