今日から魔王はじめます!
一陣の風が吹く。


ひゅお、という空気が私の頬を撫でたその刹那、膨れ上がった殺気とともに、


隊長が動いた。



「シッ!!」



鈍色の剣尖が閃き、一直線を描いて私の手元を狙う。


まさに閃光のように。


そんなことを考える余裕もなく、私は横に転がりながら、それを辛うじて避けた。



動く殺気に、追撃されることを悟った私は、半ば反射的に剣を差し出した。



ガキィィン!!



耳を貫くような金属音。


骨まで浸透するような衝撃に歯を食いしばりながら耐える。


受け止めたのに、こんなに手が痺れるなんて。



「いっつ……」


「どうした、逃げるだけか!」


「逃げません!」



剣士でいる間は、私は逃げない!


体勢を立て直し、再び隊長に肉薄する。


振りかぶった剣は、いとも簡単に受け止められた。



鍔迫り合い。力で押し負けたら、それで終わってしまう。



「諦めるな!」
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