今日から魔王はじめます!
と、言っても。


私がレンに目にもの見せることなんて、出来るはずがない。


今まで私は、彼にいろんなものを“借り”すぎている。



「愛美、昨日眼鏡壊しちゃって、悪いな」



食堂へ向かう途中で、レンが少し済まなそうに言った。


ああ、そのことか。


そう言えば、お姉さんに地図を貰う前に、眼鏡を落として割ってたね。



「いいよ。レン、その目のままで大丈夫?」


「瞳の色がバレてヤバイのは、やっぱりお前も同じだしな。


伏せてれば大丈夫だろ。下向くとかしてさ」


「そうだね」



頷いてから、私は少し手を顎に当てた。


あの時、レンは確か、頭を振ったり、眼鏡を触る動作をしなかったはずだ。


お姉さんもそれと同様で、彼女の手がレンの眼鏡に当たったというわけでもない。



それならどうして、眼鏡は落ちて割れたんだろう。



「…突然、レンズにヒビが入って、割れたんだ」



聞くと、レンか苦い声で答えた。


突然、ヒビが…?
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