今日から魔王はじめます!
東大島の港に着いた、というアナウンスが流れる。


それを聞いた私達は荷物をまとめ、この乗り心地最悪の安船からとっとと退散するべく、


急いで鍵を返してチェックアウトを済ませた。



「愛美、部屋に忘れ物は?」


「ないってば、もう!私はレンの妹とかじゃないんだからね」


「だってお前、たまになんか抜けてるし」



余計なお世話だ。


膨れてみせると、レンは真面目な顔のまま私に近づくと、かつらに手を伸ばし、髪に触れる。



「黒髪出てるぞ」


「あ…ありがとう」



不意打ち!


神がかった美貌が目の前にいきなり来ると、心臓に悪いからやめて欲しい。



バクバクした心臓を押さえつつ、私は船を降りていくレンを追う。


ああもう、いろいろ大変なことがありすぎて、聖剣探しも上手く行く気がしないよ。
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