今日から魔王はじめます!
「いくら幻獣とは言え、弱体化すればこんなものですか」
聞こえてきたのは、私のよく知っている声で。
「実に残念です、陛下。スレイブヤードの者を倒し、勇者と共に逃避行ですか。
しかも挙句の果てに敵の王子を友だと仰る」
「ウソ、だろ……」
レンの唖然とした呟きに、愉悦をまじえてその声はこう言った。
「いいえ、全て現実です」
ならばなんて、残酷な現実なんだ。
「……ランス、さん」
そう。
そこにいたのは、私の一の忠臣であり、信頼できる優しい魔族であるはずの。
滴る血より真っ赤な目をした、“智の王”ランスロットだったのだ。