今日から魔王はじめます!
魔王の亡霊の叫びとともに、魔剣から吹き出す漆黒の魔力。


それが何より悍ましい闇に見えて、私はぐっと聖剣の柄を握る。


息を吸い込んで、ゆっくりと剣先を上段へと移動させる。


その動作に呼応するように、魔王の亡霊も重心を下に沈めた。



「ハアァッ!!」



再びの跳躍。


狙うは頂点、面の一本。


一歩、二歩と踏みしめながら、一気に飛び上がって、上から剣を振り下し、



「駄目だ愛美!罠だッ」


「!!」



その言葉に、とっさに反応することができなかった。


刹那、魔王の亡霊がこちらを見てにやりとほくそ笑む。


背筋に怖気が走ると同時に、白銀の風刃が宙に舞う。


いくつもの、小さな飛ぶ斬撃となって。



「うそっ」



蒼白になった次の瞬間、私は赤い焔によって地面に叩きつけられていた。


受け身をとれずに転がり咳き込むが、火傷はない。


この炎は。



「不死鳥!ありがとうっ」
< 327 / 383 >

この作品をシェア

pagetop