今日から魔王はじめます!
「強大な魔力って…だから、私は人間なんですってば…。


魔王になんて、なれません。


ましてや戦争だなんて、そんなの…」



無理に決まってる。


私は、戦争だなんて言葉は、教科書の中でしか耳にしたことがない。


剣道をやっているとは言え、それは制限時間内の単なる“スポーツ”であり、


殺し合いに使えるものではないのだ。



「いいえ、貴女は魔族の女王にあらせられるお方です。


黒い炎を操り、意のままに消した…。


黒い炎は魔王の象徴、そして、魔力が強い者ほど純粋な黒に近い目の色と髪の色をするのです」



私は無言で、自分の髪を一房持った。


日本では当たり前のような黒髪。


それが、ここでは王である証拠だというのか。



「“最凶”そして“憑依”の悪魔、と呼ばれた先代様も、貴女ほど純粋な黒の髪を持ってはいらっしゃいませんでした。


マナミ様はきっと、始祖様…初代魔王陛下に匹敵する魔力をお持ちです」



その始祖様って日本人じゃないのか。


未だに黒髪が高魔力の象徴ということに納得のできない私は、唇を尖らす。



その時だった。



再びの破壊音が、焼けた森の向こうで、響き渡った。
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