今日から魔王はじめます!

あの時はわからなかったけど、何気ない日常が、今は焦がれるほどに恋しい。


私は……魔王になんて、なりたくなかったのに!



瞬間。


聖剣による衝撃波の防御の間を縫って飛来した黒の槍が、私に迫った。



「――――っっっ!!」



脳裏に浮かぶ“死”の一文字。


これで私は死ぬのだと、そう思ったのに……、


予想していた痛みはいつまで経ってもやってこなかった。


代わりにあったのは、さっきのオーロラの鏡。



レンの、聖力で作られた、鏡。



「どう、して」



自分の身を挺してまで、レンは私を守ってくれるの?


こんな大きな技を使って、どれだけ辛いか、想像できないはずがないのに。



「愛美……ッ!」



レンの息も絶え絶えな声が、私に届いた。



「前だけ、見てろ!!」
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