今日から魔王はじめます!
「落ち着いて。大丈夫、首なんて刎ねたりしないよ、ねぇ」



そう言って、魔族の少年の肩に触れる。


しかし、その肩がビクッと震えて、反射的に手を引っ込めてしまった。


そして周りを見回すと、恐怖に顔を歪めた他の魔族の人たちが、私達を遠巻きに見ていた。


泣きそうな顔でおろおろしているのは、この子のお母さんだろうか。



「どうかしたのか」



響いたのは、手に地図を持ったランスさんの声だった。


弾かれたように顔を上げた男の子が、安堵に顔を少し綻ばせる。



「ランスさん…私、ただ…この子の怪我を心配しただけで…」


「…わかっております、陛下。貴女は心優しいお方だ…。


少年、安心しろ。十三代目様は先代様のように“厳しすぎる”お方ではない」



ランスさんがふわりと微笑んで、男の子の怪我をした膝に手を翳す。


温かく白い光が漏れ出て、それが消えた時には、既に彼の怪我は綺麗に治っていた。
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