今日から魔王はじめます!
ランスさんは、争いを嫌った初代陛下のことを敬愛しているのだろう。


だからきっと、初代に似た私に、こんなに良くしてくれるのだ。


何しろ、この人は、魔族で唯一魔王に逆らい、人間との和解を望んだ人だもの。



「…私は、どうすればいいんでしょうか」



初代魔王陛下。


あなたはどうして、人間と魔族を分かつ未来を選択したの?


私がこの世界で、魔王として生きるしかないのなら、どうすればいいのかな。


誰か教えて下さい。



「貴女は、貴女らしくいてくださればいい」


「ランスさん」


「貴女を…魔王を支えるのが、宰相としての役目ですので」



強い人なんだ、この人は。


けれど…支えられるだけではなく、支えなくては壊れてしまう。



「…おや、陛下。御手に怪我を?」


「へ? あ、ああ…」



私は、胸元に持ってきていた自分の手を見下ろす。


そこには、あの兵士さんを手当した時の火傷がまだ残っていた(当たり前だが)。


すっかり、忘れてた。
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