妄想オフィス・ラブ ~キスから始まるエトセトラ~
カチカチカチとマウスを動かす音以外聞こえない夜のオフィス。
いつもならとっくに帰ってるこの時間に1人残って残業。
っていうか、バカ宮。
人に無理言わせて帰ったとかありえない。
今日は私の癒しデイだったのに!
はぁぁぁぁぁぁ。
「会いたかったなぁ…」
思わず漏れ出た声に不機嫌な声が重なる。
「誰にだよ」
はっ?
ビクッと肩を震わせてキョロキョロ回りを見渡せば、オフィスの入口に腕を組んで凭れかかってる男。
目の悪い私は、んーーーーーっと軽く目を細めて、何となくの背格好から当たりをつける。
「高宮?」
「くくっ。何ビビってんの?」
カツカツと靴をならしながら私の机までやってきて、ほれっとカフェオレを置く。
「ありがとう…てか帰ったんじゃなかったの?」
「あほか。さすがにお前に無理行って1人で帰るほど俺も鬼じゃねえぞ」
プシュっとブラックのコーヒーを開けながら隣の席から椅子を持ってきて腰かける。
「あらそう?珍しく優しいじゃない」
貰ったカフェオレを開けながら、チラリと高宮を除き見れば、中々に不機嫌そうな顔。なんなのよ。
「終わったか?」
「は?あ…あぁ。後はもうあんたに確認して貰ったら大丈夫。帰ったと思ってたから保存だけかけて、メールに添付しておこうと思ってたんだけど、居るなら見てよ。これで大丈夫?」
図面の全体図を出し、パソコン画面を見るようにお願いして、隣から近づく気配に場所をあけようと自分の椅子をひこうとすれば、マウスを持っていた私の右手の上から重なる大きなゴツゴツした手。
えっ?
と思っていると左側には私を囲うかのように置かれる高宮の左手。
ビックリして思わず顔を後ろに引けば、トンとあたる高宮の胸板。
パーソナルスペースを完全に無視したこの距離に頭が真っ白に。
ちょ、
「た…高宮。近い…」