妄想オフィス・ラブ ~キスから始まるエトセトラ~


そうこう話しているうちに、会社へ着いた。ここは、言い逃げが得策かも。

「私、一端ロッカーよるから又後でね。営業の高宮くんが昨日机に新しい図面置いてたから確認しといてね。じゃ!」

と、言い捨てて無理やり予定を入れさせた。
だって、こうでもしないと中々他の人と話さないんだもんな影山君。元々愛想良く話す子じゃないし、余計な事も話さないから、同じ部署の同僚たちだって彼と話す機会がないと遠巻きに眺めている。

もったいないよねー。あの容姿なのに。
もうちょっと愛想良くしたらもてるのに。
いや今もモテてるんだけどね。
いいねぇいいねぇ若いっていいねぇ。

一人でムフムフにやついていると、後ろから声をかけられた。

「瑞希、おはよー」

同期の柴崎麻美だ。
最近同じ同期の高宮からプロポーズされたとこの前のランチもずっとのろけを聞かされたもんだ。まぁ仕方ないよね。
回りからみたら両思いにしか見えなかった二人だったけど、じれじれぐずぐずしながら結ばれて、もうけっこうたつもんね。

「おはよー麻美。今日の飲み会くるんだったっけ?」

「ううん。今日は予定があって行けないの。ゆっくり瑞希と飲みたかったけど、残念。ねぇ、さっき影山君と一緒に居た?」

「うん、居たよー。電車で偶然会ってね、そのまま一緒に歩いてきたの」

ロッカールームまで歩きながら話す。

「ねぇ。影山君とさ、いつもなに話してるの?あの子が話してるところあんまり見たことないけど」

「えー普通だよ?でも、私が一方的に話してるだけだから、向こうは嫌がってるかも。パワハラかなぁ、あはははは」


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