妄想オフィス・ラブ ~キスから始まるエトセトラ~


「ふっ………んっ……っ」

少しづつ喉を通るお茶に、吐息が漏れる。
それを2度、3度と繰り返し、口から零れたお茶をペロリと舌で舐めとられて、唇が離れた。

頭がぼーっとして、何をしたのか、なんでこうなったのか、どうして影山君がこんなことをしたのか、考えなきゃいけないことは沢山あるのに、離れてしまった唇が少し寂しく思えて、ただ、ただ、気持ち良かったなぁーって、離れた影山君の濡れた唇を眺めた。




「………っ、……まだ、欲しかったですか?」

「………………うん」

「………っ、」

「………………」

「…………それは、お茶…が?キス…が?」

「……………えっと……影山君……が?」

「………っ、意味分かってます?」

「………うん」

影山君は、手に持っていたペットボトルの蓋を閉めて荷物の横に置くと、今だぼうっと影山君を見つめる事しか出来ない私の腕を引っ張り彼の胸に抱き留められる。
鼻腔をくすぐる彼の匂いにくらっとして、反射的にスーツを掴んでしまった。

「………だから、危機感を持てって」

敬語の無くなった彼の口調に『男』を感じて、一気に胸が高鳴り出す。

うわっっっ。
何これ、顔が熱いっっ。
急な心臓の早すぎる鼓動に胸が苦しい。

そっと頬に触れた温もりに、ビクリと体が震える。影山君の右手が私に触れている。
そう認識すると、なぜか目尻が熱くなってきた。
じわりと潤む瞳に、熱くなった頬。
みっともない顔をしているだろうが、夜で暗いから良かった、なんて冷静な自分もいて。

それでも、目を反らすことも出来ず、どうしたらいいのか、本当にわからなくなってしまった。

「………っ、怖い…ですか?」




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