妄想オフィス・ラブ ~キスから始まるエトセトラ~
伺うように、戸惑いぎみに眉を下げて私の反応を見つめる。
「こわっ……怖くない…よ?ただ、…ごめん、ドキドキし過ぎて…死にそう…」
言いながら目尻に溜まった涙が零れる。
「………っ、」
頬に触れていた影山君の大きな手で零れた涙を拭ってくれる。
「ねぇ。もう一回…名前、呼んで?」
「………っ、」
「敬語も嫌だ」
「………っ、」
今日の朝、彼はまだ可愛い『後輩』だ
った。
だけど、朝のラッシュで近付いた物理的な距離に嫌な気持ちにはならなかった。
あまり喋らない彼との会話も、無言が続く空間も不思議と自然な気がして、いつも心地よかった。
飲み会で、飲みすぎを注意されても、彼の言うことならなぜか素直に聞けた。
ナンパから助けてもらって、怒られても、怖かったけど、ヒーローみたいでカッコ良かった。
キスをされてドキドキした。
気持ち良かった。
もっとして欲しくなった。
この気持ちはなんだろう。
名前を呼ばれて、敬語もなくして、『後輩』から抜け出した彼に…うううん。
抜け出して、欲しくなったんだ。
スーツを掴んでいた手を彼の背中に回して、少し力を入れて抱き締める。
「駄目?」
目を見つめながら、お願いする。
「………っ、、、瑞希、好きだ」
頬に触れていた手が、私の頭に回り、力を入れて引き寄せられる。
噛みつくようなキスをされて、食べられてしまいそうなほど、角度を変えて何度も口づける。
唇をこじ開け、割って入ってきた舌にビックリして、思わず後ろに逃げようとしても、私の後頭部を押さえ、反対の手はいつの間にか腰を抱き寄せていたため、逃げることも出来なかった。
「んっ、、、はっ………んっ、」
「逃がさないから」
「んんっ、……………っ、」