妄想オフィス・ラブ ~キスから始まるエトセトラ~

どれだけ時間がたったのか、余りにも深くて甘いキスをされて、体から力が抜けて動けなかった。

影山君に体を預け抱き締められながら、息を整える。

「………すみません。大丈夫ですか?」

彼の腕の中はドキドキしても、妙に落ち着いて、安心する。
そんな発見が嬉しくて、思わず笑みが溢れた。

「ふふふふふ。なんか落ち着く」

「………っ、」

「でも、又敬語だ」

「………っ、」

私を抱き締めている彼の鼓動も早い。
一緒だ…。
二人してドキドキしながら、ただ時間だけが過ぎていく…
あれ?
時間?

「はっ、、影山君!時間!終電!」

ガバッと腕の中から起き上がり、鞄を探す。私が見つけるよりも先に、スーツのポケットから携帯を出した影山君が、時間を確認する。

「23時ですね。そろそろ行きましょうか」

終電が行っていなかったことを安堵しつつも、離れがたい気持ちも拭えない。

そんな気持ちが伝わったのか、影山君がクスリと笑った。

「ククッ……遅くなりました。送りますから帰りましょう」

初めてみる彼の笑顔に目が離せない。
荷物を持って駅の方へ歩き出そうとした足が思わず止まる。

「………どうしました?」

怪訝そうに眉を寄せてすぐにいつもの表情に戻ってしまった。

「ううん。初めて笑ったとこ見たなと思って。ドキドキする」

「………っ、」

再び歩き始めると今度は彼が付いてこない。

「影山君?」

振り替えると、手の甲で口許を押さえ、ほんのり赤くなっている顔が見える。

うわー。今度は照れてる。

「照れてる?ふふふ。可愛い」

「………っ、、、なっ、、、」

今日は色んな影山君が見れたなぁ。
うふふふふ。

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