ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~
背後から隣へ
ゴールデンウィークが終わると同時に、あっという間に桜の時期も終了。
北国の遅い桜を楽しんだ人々の熱も、賑わいも引いて、通常通りの毎日がまた始まった。
あたしの休日は、坂井君と一緒に三津谷さんと会った以外は特に何事もなく、大量に出された宿題を片付けるだけで終わってしまった。
でもあの日以来、一度も三津谷さんの夢は見ていないし、無意識のうちに自分の日常の行動が変化するなんて現象も起きてはいない。
「やっぱり兄貴は、夢を通して伝えたいことがあったんだな」
今朝、天文部の部室でそう報告するあたしに、坂井君は考え込みながら言った。
「てことは、これからまた新しい夢を見る可能性もあるってことだよな?」
「だと思う。三津谷さんの夢も最初は見なかったのに、ある日突然見始めたから」
それにあたしは、坂井君自身には叶さんの言葉を伝えていないし。
叶さんの心残りを解消することが夢を見なくなる条件なら、まだ達成されていないことになる。
「それなら天文部の鍵、まだ返さない方がいいかもな」
「うん。千恵美ちゃんにまだしばらく借りてもいいかどうか、聞いてみるね」
ふたりが秘密の話ができる場所は、確保しておいた方がいい。
部室を出て坂井君と一緒に教室に向かいながら、あたしはスカートのポケットの中の鍵に指先で触れてみた。
それは冷たく固い金属なのに、なんだか指先がポッと温かくなったような不思議な気持ちを感じた。
北国の遅い桜を楽しんだ人々の熱も、賑わいも引いて、通常通りの毎日がまた始まった。
あたしの休日は、坂井君と一緒に三津谷さんと会った以外は特に何事もなく、大量に出された宿題を片付けるだけで終わってしまった。
でもあの日以来、一度も三津谷さんの夢は見ていないし、無意識のうちに自分の日常の行動が変化するなんて現象も起きてはいない。
「やっぱり兄貴は、夢を通して伝えたいことがあったんだな」
今朝、天文部の部室でそう報告するあたしに、坂井君は考え込みながら言った。
「てことは、これからまた新しい夢を見る可能性もあるってことだよな?」
「だと思う。三津谷さんの夢も最初は見なかったのに、ある日突然見始めたから」
それにあたしは、坂井君自身には叶さんの言葉を伝えていないし。
叶さんの心残りを解消することが夢を見なくなる条件なら、まだ達成されていないことになる。
「それなら天文部の鍵、まだ返さない方がいいかもな」
「うん。千恵美ちゃんにまだしばらく借りてもいいかどうか、聞いてみるね」
ふたりが秘密の話ができる場所は、確保しておいた方がいい。
部室を出て坂井君と一緒に教室に向かいながら、あたしはスカートのポケットの中の鍵に指先で触れてみた。
それは冷たく固い金属なのに、なんだか指先がポッと温かくなったような不思議な気持ちを感じた。