ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~
三十分前のことも覚えていられず、排泄の始末も自分ではままならなくなって、会話が通じることもまれになり……
飲んでいる薬の作用もあって、ぼうっとした目で、遠くばかりを見るようになった。
「骨折さえしなきゃ、まだまだ元気なはずだったのにな」
「運が悪かったんだよね」
「不運って、向こうから勝手にやってくるんだよ。こっちは普通に、真っ当に生きているだけなのに。まるで……」
「まるで?」
「まるで、交通事故みたいにさ」
あたしは、ばあちゃんの顔から坂井君へ視線を移した。
坂井君はパイプイスの背もたれに背中をあずけて、どこか遠くに思いを馳せている。
大切な兄を事故で亡くし、今もこうして、大切な人が少しずつ少しずつ遠ざかっていくのを見守り続ける彼の心の内は、うかがい知ることもできない。
そんな大きな物を抱えながら、坂井君はそれでも毎日学校へ通って、普通に笑って、そして真っ当に生きている。
「……ばあちゃん」
あたしは手を伸ばし、真っ白な髪の毛にそっと触れた。
そして眠ったままのばあちゃんに、伝えたい言葉を、告げた。
『それでも、大好きだよ』
飲んでいる薬の作用もあって、ぼうっとした目で、遠くばかりを見るようになった。
「骨折さえしなきゃ、まだまだ元気なはずだったのにな」
「運が悪かったんだよね」
「不運って、向こうから勝手にやってくるんだよ。こっちは普通に、真っ当に生きているだけなのに。まるで……」
「まるで?」
「まるで、交通事故みたいにさ」
あたしは、ばあちゃんの顔から坂井君へ視線を移した。
坂井君はパイプイスの背もたれに背中をあずけて、どこか遠くに思いを馳せている。
大切な兄を事故で亡くし、今もこうして、大切な人が少しずつ少しずつ遠ざかっていくのを見守り続ける彼の心の内は、うかがい知ることもできない。
そんな大きな物を抱えながら、坂井君はそれでも毎日学校へ通って、普通に笑って、そして真っ当に生きている。
「……ばあちゃん」
あたしは手を伸ばし、真っ白な髪の毛にそっと触れた。
そして眠ったままのばあちゃんに、伝えたい言葉を、告げた。
『それでも、大好きだよ』