ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~
「翠、帰ってきてたのか?」

「お父さん、どうしたの?」

「お母さんから、お前がまだ帰って来ないって連絡が来て探してたんだ。お前、どこ行ってたんだ?」

「心配かけてごめんなさい。まだ仕事中なのに」

 眉を八の字にして溜め息をつくお父さんの顔色をオドオド伺っていたお母さんが、一変して不自然なほど朗らかな声を出す。

「とにかく、家の中に入りましょう!? おじいちゃんとおばあちゃんにも謝りなさい! すごく心配してたんだからね!」

 お母さんに背中を押され、家の中に入ると、玄関先でおじいちゃんとおばあちゃんが待ち構えている。

「翠ちゃん! よかった、帰ってきたのね!」

「心配したんだぞ? とにかく本当によかったなぁ」

 あたしの無事を喜んでくれたふたりが、あたしの後に続いて入ってきたお父さんを見て目を丸くした。

「なんだ、どうしたんだ? お前まだ仕事中だろう?」

「翠が帰ってこないから探してくれって電話がきたから、仕事放り出して探してたんだよ」

「あらまあ、そんな、仕事中なのに電話なんかしちゃだめじゃないの」

 おばあちゃんがお母さんを、たしなめる。

 それはちょっと注意する程度の口調だったけれど、お母さんの目に怯えが走ったのがわかった。
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