ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~
「す、すみませんでした。翠に何回電話しても繋がらなくて、心配で慌ててしまって」

「まずは心当たりのお友だちのご自宅に電話してからでも、遅くなかったでしょう?」

「翠の友だちの電話番号は、聞いてなかったものですから……」

「お前、それじゃだめだろう? そんなだから今日みたいになにかあったとき、こんな騒動になるんだぞ?」

「すみません……」

「娘の友だちの連絡先くらい、把握しておくべきだぞ?」

「は、はい」

「そんなの、昔の母親だったら誰でもやってたことなのに。いまは時代が違うのかしらねぇ」

「そうだよ、おばあちゃん」

 流れる水を断ち切るように割って入ったあたしの声に、一斉にお母さんを責めていた流れもピタリと止まった。

 お母さんもお父さんも、おじいちゃんもおばあちゃんも、みんなキョトンとした顔であたしを見つめている。

「……え? なに? 翠ちゃん?」

「だから、時代が違うの。いまは学校でも個人情報保護を重視してるから、電話番号とか勝手に教えちゃいけないの」

「あ、あら、そうなの?」

「うん。だからあたし、わざとお母さんに教えてなかったの。今回の件はぜんぜんお母さんの責任じゃないんだから、お母さんを責めるのは筋違いだからね?」

 強い口調でよどみなく答えるあたしに、お父さんたちはなんだか調子が狂ったような、据わりの悪い表情になった。
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