ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~
 その言葉を聞いた坂井君の両目が、大きく見開かれた。

 悲しみとも、切なさとも、愛しさとも、なんとも表現しようもない顔をして、彼はあたしの左目を見つめ続けている。

 なにかを言おうとして口を開き、でもなにかを悟ったような顔をして、なにも言わずに唇を閉じた。

 そして泣き笑いの表情を隠すように俯いて、自分の足元の枯れた草を見つめてポツンと言った。

「なにそれ? ひでえ」

 ……うん、そうだね。

 ひどいよね。

『さようなら』なんて、『どうか幸せに』なんて、なんてひどい言葉だとあたしも思う。

 遺された者が、最後にこんな言葉を聞かされて、どんな気持ちになるか。

 こんな……こんな、置いてきぼりの言葉を遺されて。

 これで本当に最後なんだと、もうどこをどれほど探そうとも、結局あなたは、いないのだと。

 それを思い知らされる言葉を、遺されて……。

 なのに文句のひとつも、言い返せない……。
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