ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~
 でもね、叶さんにとって、それが本当の本当に、最期の言葉だったんだ。

 自分の命が尽きることを悟った瞬間、この世界に遺す弟のことを、彼は案じた。

 大切な弟に、別れの言葉すら告げられずに逝くことなど、どうしてもできなかった。

 祈りたかったんだ。心の底から幸せを。

 自分のいない世界で、自分がなにもしてあげられない世界で、それでも弟が幸せに生きていくことを。

 ただそれだけが、叶さんの最期の願いと言葉だったんだ。

「……」

「おい」

「……」

「なんでお前が泣いてんの?」

「だって」

 だって、だって、だって。

 だって、わかるんだよ。

 これが、あたしにとっても叶さんとの別れだって。

 おそらくもう二度と、あたしが叶さんの記憶の夢を見ることは、ないんだろうって。
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