ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~
「なに言ってるの! 万が一のことがあったらどうするの!? 学校は人が多いんだし、用心しなきゃだめ! それに今の時期、花粉やホコリにも注意しなきゃ!」
「う……うんそうだね。お母さんの言う通りだね。ごめんなさい」
「もっと危機意識を持たなきゃだめでしょ!? ところで目薬は!? 忘れないで持ってきた!? 学校でもちゃんと点してる!?」
「大丈夫だよ。ちゃんと時間通りに点してるから」
「本当に!? お母さんは学校の中までついててあげられないのよ!? 翠、もっとしっかりしなさい! 自分でしっかりしないとだめなのよ!?」
「わかってるよ。わかってるから、しっかり前見て運転して。お願い」
こっちに向かってツバを飛ばす勢いでしゃべりまくるお母さんにそう言った後、あたしは助手席の窓から外を眺めて、またこっそり溜め息をついた。
窓から見える季節はもう、すっかり春。
ちょうどあたしが退院した頃から降雪が収まって、徐々に春の足音が聞こえるようになった。
分厚い灰色の雲の奥に隠れてばかりだった太陽がひょこひょこと顔を出し始めるにつれて、毎日氷点下だった気温も緩み、町中を覆い尽くしていた真っ白な綿帽子がみるみる溶けていく。
ずっと白一色の下に隠れていた土の茶色や、家々の屋根の色や、雪囲いの下の樹々の枝が目につき始めれば、いよいよ北国の遅い春が始まる。
4月の下旬になれば、ポチリと小さかった桜の蕾もふんわり緩み始めて、最近あちこちで桜祭りの準備の掛け声が聞こえてくるようになった。
「う……うんそうだね。お母さんの言う通りだね。ごめんなさい」
「もっと危機意識を持たなきゃだめでしょ!? ところで目薬は!? 忘れないで持ってきた!? 学校でもちゃんと点してる!?」
「大丈夫だよ。ちゃんと時間通りに点してるから」
「本当に!? お母さんは学校の中までついててあげられないのよ!? 翠、もっとしっかりしなさい! 自分でしっかりしないとだめなのよ!?」
「わかってるよ。わかってるから、しっかり前見て運転して。お願い」
こっちに向かってツバを飛ばす勢いでしゃべりまくるお母さんにそう言った後、あたしは助手席の窓から外を眺めて、またこっそり溜め息をついた。
窓から見える季節はもう、すっかり春。
ちょうどあたしが退院した頃から降雪が収まって、徐々に春の足音が聞こえるようになった。
分厚い灰色の雲の奥に隠れてばかりだった太陽がひょこひょこと顔を出し始めるにつれて、毎日氷点下だった気温も緩み、町中を覆い尽くしていた真っ白な綿帽子がみるみる溶けていく。
ずっと白一色の下に隠れていた土の茶色や、家々の屋根の色や、雪囲いの下の樹々の枝が目につき始めれば、いよいよ北国の遅い春が始まる。
4月の下旬になれば、ポチリと小さかった桜の蕾もふんわり緩み始めて、最近あちこちで桜祭りの準備の掛け声が聞こえてくるようになった。