ごめんね、キミが好きです。~あと0.5ミリ、届かない想い~
 やっと授業が終わって先生が教室から出ていった途端、待ち構えていたように、クラスメイトの千恵美ちゃんが席に駆け寄ってきて話しかけてきた。

「翠ちゃん、検査どうだったの!?」

 高校に入学してまだ日が浅く、同じ中学校の仲間同士で固まっている他のクラスメイトたちが、さり気なく会話に聞き耳を立てているのがわかった。

「大丈夫だよ。おかげ様でなにも問題なし。順調だって先生に太鼓判押された」

 あたしは瞬時に笑顔の仮面を顔に貼りつけて、明るく答えた。

 こういった強引な切り替えの速さは、お母さんや家族への長年の対応ですっかり身に染みついている。

「でもさ、なんか翠ちゃん、元気なくない!?」

「ちょっと疲れてるから。大きい病院ってすっごく混んでて、待ち時間が長くて大変なの」

「あー、わかるわかる! 病院の待ち時間って苦痛だよねー!」

 素直に納得してうんうん頷く千恵美ちゃんとあたしは、中学の二年間同じクラスだった。

 胸まで届く長い素直なストレートヘアが、千恵美ちゃんのトレードマーク。

 ぷっくりとした丸顔で、目もくるりと丸い彼女はとても可愛らしい。

 しかも自己主張がはっきりしていて、男子にも人気があるヒエラルキー上位タイプの千恵美ちゃんとあたしとでは接点がなく、これまでほとんど話をしたことはない。

 それがこうして同じクラスになって毎日話すようになり、意外にも馬が合うことに気がついて、あたしたちはすぐ下の名前で呼び合うようになった。
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