隣の席の左利きの小川くん
だけど告白する勇気なんてなかった。
わたしは昔から引っ込み思案で恋はするけれど、いつも見ているだけだった。
近づきたいけど、近づけない。
嫌われたらどうしようって、そんなことばかり考えて。
だからわたしは小川くんがいないときにこっそり、机の距離を縮める。
ちょっとでも話せるきっかけを作るために。
*
そんなある日の放課後。
だれもいないのをいいことに、小川くんの机を戻したあと、そっとその机に触れてみた。
いけないことをしているようで、ちょっとどきどきする。
「あれ、吉岡さん。まだ残って───、」
「……っ!?」
振り向けば驚いたように目を見張る小川くんの姿があった。
たぶんわたしも同じ顔をしていると思う。
だって、───見られた。よりにもよって本人に。
咄嗟に机から手を放したけれど、その反応からして見られたのは明確で。今すぐ逃げ出したい衝動に駆られた。