イジワル副社長に拾われました。
「で、桐原さん」
「はい」
「俺の肩書見て、それでも怪しい仕事を紹介されると思っているのか?」
「ま、まさか」
フルフルと首を横に振る。
白井さんの名刺に書かれてある社名は、私もよく知ってる名前で。
「香月の名前を知らない女性なんて、いないと思います」
白井さんに気を遣って言うわけじゃない。
香月化粧品といったら、日本でもトップの化粧品メーカーだ。
社名のついた『KOGETSU』と、若い女性からの圧倒的な支持をうける『プチ・リス』が特に有名なブランド。
このふたつのブランドを柱に、ドラッグストアでも手軽に買えるプチプラコスメから、エイジングケアに特化した高級ラインまで幅広く展開していて。
「私はプチ・リスのファンで、祖母は昔からずーっとKOGETSUを愛用してます」
私の言葉に、白井さんの頬が少し緩んだ気がした。
やっぱり自分の勤めている会社の商品が褒められたら、嬉しいよね。
「うちの商品を知っているなら話が早い」
いつの間にか目の前に現れたビルの自動ドアをくぐり抜け、エレベーターにふたりで乗り込む。
「今から行くのは、うちのポスター撮影の現場だ」
「ポスター、ですか?」
「ああ、来年の春の新商品のな」
チン。
目的地を知らす軽快な音が鳴る。
「で、お前に頼みたいのは、うちのアーティスト部のアシスタントだ」
「え?」
まだ状況が呑み込めない私を引き連れて、白井さんはつきあたりの部屋の前で足を止めた。
「宣伝時、うちはモデルのメークを自社のアーティストにさせている。自分のところの商品を一番上手に使えるのは、自分のところのアーティストだっていう自負があるからだ」
そう言い切る白井さんの言葉には、自信がみなぎっている。
「うちのアーティストさんたち、猫の手も借りたい忙しさなんだとよ。まあ、未経験とはいえ、ネコよりは使えるだろうから」
「はは……」
ネコと同列に話を進めるとは。
白井さんのさっきから少しずつ入る毒舌に、苦笑いを浮かべるしかない。
でも、私が今、何か仕事をしないといけないのは事実だ。
「はい」
「俺の肩書見て、それでも怪しい仕事を紹介されると思っているのか?」
「ま、まさか」
フルフルと首を横に振る。
白井さんの名刺に書かれてある社名は、私もよく知ってる名前で。
「香月の名前を知らない女性なんて、いないと思います」
白井さんに気を遣って言うわけじゃない。
香月化粧品といったら、日本でもトップの化粧品メーカーだ。
社名のついた『KOGETSU』と、若い女性からの圧倒的な支持をうける『プチ・リス』が特に有名なブランド。
このふたつのブランドを柱に、ドラッグストアでも手軽に買えるプチプラコスメから、エイジングケアに特化した高級ラインまで幅広く展開していて。
「私はプチ・リスのファンで、祖母は昔からずーっとKOGETSUを愛用してます」
私の言葉に、白井さんの頬が少し緩んだ気がした。
やっぱり自分の勤めている会社の商品が褒められたら、嬉しいよね。
「うちの商品を知っているなら話が早い」
いつの間にか目の前に現れたビルの自動ドアをくぐり抜け、エレベーターにふたりで乗り込む。
「今から行くのは、うちのポスター撮影の現場だ」
「ポスター、ですか?」
「ああ、来年の春の新商品のな」
チン。
目的地を知らす軽快な音が鳴る。
「で、お前に頼みたいのは、うちのアーティスト部のアシスタントだ」
「え?」
まだ状況が呑み込めない私を引き連れて、白井さんはつきあたりの部屋の前で足を止めた。
「宣伝時、うちはモデルのメークを自社のアーティストにさせている。自分のところの商品を一番上手に使えるのは、自分のところのアーティストだっていう自負があるからだ」
そう言い切る白井さんの言葉には、自信がみなぎっている。
「うちのアーティストさんたち、猫の手も借りたい忙しさなんだとよ。まあ、未経験とはいえ、ネコよりは使えるだろうから」
「はは……」
ネコと同列に話を進めるとは。
白井さんのさっきから少しずつ入る毒舌に、苦笑いを浮かべるしかない。
でも、私が今、何か仕事をしないといけないのは事実だ。